「これって経費になるの?」という問いに、毎年の確定申告シーズンになると悩む個人事業主は少なくありません。私自身、AFP・宅地建物取引士として保険代理店時代にフリーランスの資金相談を数百件受け、今は東京都内で法人を経営する立場になってもなお、経費の判断には細心の注意を払っています。この記事では「経費とは何か」を所得税法の視点から整理しつつ、私が5年で体得した7つの判断基準を実体験とともにお伝えします。
経費の基本定義と所得税法上の扱い
所得税法が定める「必要経費」の要件とは
所得税法第37条では、必要経費を「その年において生じた総収入金額に係る売上原価・その他当該総収入金額を得るために直接要した費用の額、及びその年における販売費・一般管理費その他業務上の費用の額」と定義しています。ポイントは「業務との関連性」と「収入を得るための直接的な支出」の2点です。
ここで注意したいのは「業務に関係するからといってすべてが経費になるわけではない」という点です。あくまで「収益を生み出すために必要かつ合理的な支出」でなければなりません。感覚でなく、この軸を常に頭に置いておくことが経費判断の出発点です。
個人事業主の経費と確定申告の関係
個人事業主が毎年3月15日までに行う確定申告では、売上(総収入金額)から必要経費を差し引いた「事業所得」に対して所得税が課されます。つまり経費が多いほど課税所得が下がり、納税額を抑える効果があります。ただし根拠のない経費計上は税務調査で問題になり得ますので、「節税」と「脱税」の境界線は常に意識してください。
私が総合保険代理店に勤務していた頃、相談に来られたWebデザイナーのフリーランスの方が「税理士に頼むお金がない」という理由で自己流で申告し、3年後に税務署から修正申告を求められたケースがありました。経費の基礎知識があれば防げたケースで、今でも印象に残っています。
私が5年で迷った7つの経費判断基準
判断基準①〜④:業務直結性・割合・継続性・金額感
個人事業主として5年間、確定申告を重ねてきた経験から、私が実際に迷ったシーンをもとに7つの判断基準を整理しました。まず①業務直結性——「この支出がなければ仕事ができないか?」と問い直すことです。民泊事業を立ち上げた際、室内装飾品を購入しましたが、「ゲストに快適な空間を提供するための設備」として業務直結と判断し、経費に計上しました。
②割合(使用比率)は後述する家事按分の核心です。③継続性——単発の支出より、業務に継続的に使う費用のほうが経費として認められやすい傾向があります。④金額の妥当性は特に重要で、「業務に使っているとはいえ、その金額が業務規模に対して合理的か」という視点です。私は民泊の備品購入で一度、合計80万円分の家具を一括経費計上しようとして、税理士から減価償却を使うよう指摘を受けました。金額規模によって処理方法が変わる点は、個人差がありますので専門家への相談を推奨します。
⑤証拠の残存性——領収書・レシートが残っているかどうかです。⑥社会通念上の合理性——「一般的に見て、その職業の人がその支出をするのは自然か」という視点です。ライターがカフェで打ち合わせをすることは社会通念上自然ですが、一回の飲食に10万円は説明が難しくなります。⑦私的享受の有無——自分や家族が享受する部分があれば、その分は経費から外す必要があります。
判断基準⑤〜⑦:証拠・社会通念・私的享受の有無
保険代理店時代に相談を受けた個人事業主の方で、スポーツジムの会費を全額経費計上していたケースがありました。「仕事のためにも体力維持が必要」という主張でしたが、税務上は私的享受の側面が強いとみなされるリスクが高い支出です。一般的には経費として認められにくいとされています。
この7つの判断基準は、私が確定申告のたびに自分なりに言語化してきたものです。特に「業務直結性」と「私的享受の有無」を軸にすると、グレーゾーンの判断がかなりシャープになります。それでも迷う場合は税理士や税務署の無料相談窓口を活用してください。個別の税額計算は専門家の領域ですので、ここでは一般的な考え方の整理に留めます。
家事按分が必要な経費の具体例
家事按分とは何か、計算の考え方
家事按分とは、プライベートと仕事の両方に使う支出を、使用割合に応じて按分し、仕事に相当する部分だけを経費にする考え方です。所得税法施行令第96条で規定されており、按分割合は「合理的な根拠」が必要です。根拠なく「50%仕事用」と申告するのはリスクがあります。
私が東京都内の自宅の一室を業務用書斎として使っていた時期、家賃の約20%を事業経費として按分していました。部屋全体の床面積に占める書斎の割合(約20%)を根拠にし、電気代も在宅業務時間の割合で算出しました。この記録は税務調査に備えて今も保管しています。
家事按分の対象になりやすい5つの支出
家事按分の対象として個人事業主に多いのは、①家賃・地代、②電気・ガス・水道などの光熱費、③インターネット・電話代、④自動車の維持費(燃料費・保険料など)、⑤自宅兼事務所の減価償却費です。それぞれに「業務使用割合」を合理的に算出する必要があります。
私の民泊事業では、物件の一部を自分の居住スペースとして使っていた時期があり、固定資産税・管理費・修繕費をすべて全額経費にしていたところ、税理士から「居住部分を按分して外すべきだ」と指摘を受けました。この経験から、按分の抜け漏れは税務上の指摘につながると身をもって学びました。個別の按分割合の計算は一般的な考え方を参考にしつつ、必ず専門家に確認することをお勧めします。詳しい按分方法については法人化せず節税できる10の方法|フリーランス必読もあわせてご参照ください。
領収書整理で失敗した実体験
「あとでまとめてやろう」が招いた確定申告の地獄
個人事業主1年目の確定申告で、私は痛い目を見ました。2月に入ってから1年分の領収書を整理しようとしたところ、封筒に無造作に詰め込んだレシートが300枚以上あり、日付・金額・用途の入力だけで丸2日かかりました。しかも数枚は感熱紙が退色して読めなくなっており、結局その分は計上を断念しました。金額にして1万5,000円ほどの経費を失った計算です。
当時の自分に言いたいのは「月次で整理する習慣を絶対に作れ」ということです。今は翌月5日までに前月分の経費を入力するルールを自分に課しており、確定申告の作業時間が初年度の約10分の1に短縮されました。
領収書管理で今すぐ変えるべき3つの習慣
経費の領収書管理で特に重要なのは、①受け取ったその場でスマートフォンで撮影する、②用途と取引先を裏書きしておく(「〇〇クライアントとの打ち合わせ」など)、③月次でクラウド会計ソフトに入力するという3点です。
私が保険代理店時代に関わったフリーランスのカメラマンの方は、撮影機材の購入領収書を紛失し、10万円超の経費計上ができなかった経験を話してくれました。「もっと早くデジタル管理を始めればよかった」という言葉が印象的でした。2026年現在、電子帳簿保存法の改正によりデジタル保存の要件が整備されていますので、電子データでの保存を積極的に活用することをお勧めします。詳細な対応方法については開業1年目の確定申告|注意すべき5つのポイントでも解説しています。
経費にできない支出の典型例とまとめ
個人事業主が誤りやすい「経費にならない支出」7パターン
- 所得税・住民税・国民年金保険料(事業経費ではなく、所得控除や別途の制度で対応)
- 罰金・交通違反の反則金(公序良俗上、経費不可)
- 業務と無関係な趣味・娯楽費(プライベートの旅行など)
- 家族への給与(青色申告の専従者給与要件を満たさない場合)
- 元本返済部分のローン返済(利息部分は経費になるが、元本は不可)
- スーツ・私服(「仕事で着る」だけでは認められにくい。制服・ユニフォームは別)
- 健康維持を目的とするジム代・サプリメント(私的享受が強いとみなされることが多い)
これらはあくまで一般的な考え方の整理です。業種や状況によって判断が異なる場合もありますので、個別の判断は税理士等の専門家へご相談ください。
7つの判断基準で経費管理を仕組み化しよう
「経費とは何か」を改めて整理すると、所得税法上の「業務上の必要な支出」という定義に加え、①業務直結性、②使用割合、③継続性、④金額の妥当性、⑤証拠の残存、⑥社会通念上の合理性、⑦私的享受の有無——この7つを軸に判断することで、確定申告のグレーゾーンがかなり減ります。
私がAFPとして、そして実際に法人を経営する立場から断言できるのは「経費管理は日常の積み重ねがすべて」ということです。毎月こまめに入力し、按分の根拠を記録し、領収書をデジタル保存する。この習慣が1年後の確定申告を劇的に楽にします。私自身、クラウド会計ソフトを導入してから確定申告の作業時間が大幅に短縮され、税理士へのチェック依頼もスムーズになりました。領収書の自動読み取りや銀行口座連携など、経費管理を効率化したい方には、下記のクラウド確定申告ソフトの活用を検討してみてください。
無料の確定申告自動化ソフト マネーフォワード クラウド確定申告
本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の投資・税務・法務行為を推奨するものではありません。記載内容は執筆時点の情報に基づきますが、最新情報や個別具体的な判断については、各分野の専門家(税理士・弁護士・宅建士・FP等)または公的機関にご相談ください。
【執筆・監修】
Christopher(AFP / 宅建士 / TLC)- 金融・不動産・法人実務の実体験ベースで執筆
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