法人住民税の均等割は、会社が赤字であっても毎年必ず発生する固定コストです。標準税率で都道府県民税2万円+市区町村民税5万円、合計7万円が最低ラインとなります。私はAFP資格を持ち、保険代理店でフリーランスの資金相談を数多く受けてきましたが、この均等割を見落として法人化した後に後悔するケースを何度も目にしてきました。法人化を判断する前に、必ず織り込んでおくべきコストです。
法人住民税・均等割7万円の仕組みを正確に理解する
均等割とは「存在するだけでかかる税金」である
法人税には大きく分けて「法人税割」と「均等割」の2種類があります。法人税割は利益に応じて課税されるため、赤字なら原則ゼロです。一方、均等割は利益の有無とは無関係に、法人として登記されている事実だけで課税されます。「会社が生きている」というだけで毎年請求される税金だと思ってください。
均等割の税率は地方税法で「標準税率」が定められており、資本金1,000万円以下・従業員50人以下の最小規模の法人であれば、都道府県民税が年間2万円、市区町村民税が年間5万円、合計7万円が課されます。この7万円という数字は、マイクロ法人や一人会社を運営する上で絶対に外せないコストラインです。
均等割の計算構造と納付先を把握する
均等割は「都道府県」と「市区町村」の2カ所に別々に納付します。東京都23区内に本店を置く法人の場合は例外で、都と区の税を東京都がまとめて徴収する仕組みになっています。そのため東京都内の法人は「都民税」として一本化された申告書を都税事務所に提出します。
納付は事業年度終了から原則2か月以内に申告・納税が必要です。決算月を3月に設定した法人であれば、5月末が申告期限になります。この期限は赤字であっても変わりません。申告書の提出を怠ると無申告加算税が発生するため、売上ゼロの休眠状態であっても必ず手続きが必要です。
私が保険代理店時代に見た「均等割の見落とし」という実態
相談者が口にした「聞いてなかった」という言葉
総合保険代理店に在籍していた頃、個人事業主やフリーランスの資金相談を担当する機会が多くありました。当時、副業解禁の流れで法人化を急いだ30代のデザイナーの方が相談にきたことがあります。その方は年収ベースで600万円ほどあり、節税目的で合同会社を設立したばかりでした。
ところが初年度は仕事が思うように受注できず、売上は80万円程度に終わりました。赤字だから税金はゼロだろうと思っていたところ、翌年の春に均等割の納付書が届き「7万円も取られた。聞いてなかった」と険しい顔で話してくれました。その方は社会保険料の法人負担分も想定外で、固定費合計が年間50万円近くに膨らんでいたのです。法人化の固定費を甘く見た典型的なケースでした。
私自身が法人決算で実感した「固定コストの重さ」
私自身も東京都内でインバウンド向け民泊事業を法人として運営しています。2020年初頭、新型コロナウイルスの影響でインバウンド需要が一夜にして消滅した時期がありました。あの春は売上がほぼゼロでしたが、均等割の7万円はもちろん、法人の税理士費用、社会保険の会社負担分が毎月淡々と出ていきました。
赤字でも払い続けなければならないコストがある、という現実をあの時期ほど痛感したことはありません。「法人を畳めばいい」と思うかもしれませんが、解散・清算にも費用と手間がかかります。均等割を含む法人の固定費は、設立前に最悪シナリオとして必ず試算しておくべきです。
均等割が発生するタイミングと「休眠」の落とし穴
設立初年度から課税が始まる
均等割は法人を設立した瞬間から発生します。たとえば11月に会社を設立して事業年度末が12月であれば、わずか2か月間の存在に対しても月割りで均等割が課されます。2か月分なら7万円×2/12≒1.2万円ですが、この計算が「年間7万円だから安い」という誤解につながりやすいので注意が必要です。
法人化の固定費として均等割を考える際は、事業年度をフルで迎えると7万円が毎年発生する、という前提で資金計画を立ててください。設立タイミングによって初年度は軽く見えても、翌年からはフルコストが来ます。
休眠会社にも均等割は課税される
「しばらく活動しないから休眠にすればいい」と考える方もいますが、法人格を残したまま休眠状態にするだけでは均等割はなくなりません。都道府県・市区町村に休眠届を提出することで納付が猶予・免除される自治体もありますが、すべての自治体で認められるわけではなく、対応は各自治体によって異なります。
東京都の場合、「異動届出書」に休業の旨を記載して提出することで均等割の申告義務自体はなくなりませんが、自治体によっては減免措置を設けているケースもあります。休眠を検討する際は必ず管轄の都税事務所または市区町村の税務課に確認することが不可欠です。いずれにせよ、休眠は「ゼロコスト」ではないと理解しておくべきです。詳しい休眠手続きについては法人決算を自分でやった初年度の全記録|顧問税理士なしもあわせて確認してください。
地域によって均等割額は変わるのか?都市部と地方の差
標準税率は全国共通だが超過課税が存在する
地方税法が定める均等割の標準税率は全国で同一です。ただし、地方税法は自治体が標準税率を超えて課税する「超過課税」を認めています。実際に東京都は超過課税を実施しており、都民税(法人都民税)の均等割は標準の2万円ではなく、最低ランクの法人でも2万3,000円となっています。
したがって東京都23区内に本店を置くマイクロ法人の均等割は、区民税(特別区民税)5万円+都民税2万3,000円=合計7万3,000円が最低ラインです。7万円ではなく7万3,000円という点は、東京都で法人化を考えるフリーランスが特に注意すべき数字です。
本店所在地の選択が均等割に影響する
均等割は本店の所在地の自治体に対して納めます。支店や事務所が別の自治体にある場合、その自治体にも均等割が発生する点も見落とされがちです。複数拠点を持つ場合は均等割が二重三重にかかる可能性があります。マイクロ法人として活動するなら、本店は自宅や使用頻度の高い場所に絞り、無駄な拠点を作らないことが固定費圧縮の基本です。
なお、バーチャルオフィスを本店として登記するケースも増えていますが、本店登記の住所がある自治体に均等割を納める義務は変わりません。バーチャルオフィスを使っても均等割はゼロにならないため、コスト計算に必ず組み込んでください。赤字法人の節税対策全般については法人設立の資本金設定|1円と100万円の違いを比較も参照してください。
法人化判断に均等割を組み込む|まとめとCTA
法人化の損益分岐点を試算する際に必ず含める費用一覧
法人化の固定費は均等割だけではありません。以下に、最小規模の法人を維持する際に毎年発生するコストをまとめます。
- 法人住民税・均等割:最低7万円(東京都23区は7万3,000円)
- 法人税申告費用(税理士報酬の目安):年間20〜40万円
- 社会保険料の会社負担分:代表者の報酬に応じて変動(役員報酬ゼロなら発生しないが実態は要検討)
- 登記関連の維持費(役員変更登記など):状況次第で数万円
- 法人口座の維持手数料:銀行によって月数百〜数千円
これらを合算すると、何もしなくても年間30〜60万円程度の固定費が発生するのが現実です。個人事業主として青色申告で節税できる範囲で収まるなら、無理に法人化する必要はないとAFPの立場からも断言できます。法人化が有利になる年収の目安は一般的に800〜1,000万円以上とされていますが、業種・家族構成・社会保険の扱いによって変わります。
それでも法人化するなら、手続きコストを最小化して動く
均等割という固定コストを正確に理解した上でなお法人化を選ぶなら、設立にかかるコストと手間を最小化することが重要です。法人設立には定款認証・登録免許税・印鑑証明など複数の手続きが必要で、専門家に依頼すると数十万円かかることもあります。
私が民泊法人を設立した際に実感したのは、設立手続きの煩雑さです。当時はほぼ自力で対応しましたが、書類の不備で法務局に2度足を運ぶ羽目になりました。今ならクラウドサービスを活用すれば書類作成の大半を自動化でき、ミスも減らせます。均等割を含む法人維持コストを把握した上で、それでも法人化を進めると決断したなら、設立コストをできるだけ圧縮することが最初のコスト管理です。
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本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の投資・税務・法務行為を推奨するものではありません。記載内容は執筆時点の情報に基づきますが、最新情報や個別具体的な判断については、各分野の専門家(税理士・弁護士・宅建士・FP等)または公的機関にご相談ください。
【執筆・監修】
Christopher(AFP / 宅建士 / TLC)- 金融・不動産・法人実務の実体験ベースで執筆
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