法人 個人事業主 戻る デメリット7選|AFPが実体験で解説

「法人を畳んで個人事業主に戻りたい」という相談は、保険代理店時代から今も後を絶ちません。売上が落ちた、維持コストが重い、一人でやるには大げさだった——理由は様々ですが、個人事業主に戻る選択には、多くの人が想定しない7つのデメリットが潜んでいます。AFP・宅建士の私Christopherが、実体験と数百件の相談をもとに正直に解説します。

法人から個人事業主に戻る選択が増えている背景

法人成りブームの反動が2020年代に表面化した

2010年代後半、「節税のために法人成り」を勧める情報がSNSやYouTubeで急拡散しました。実際に2018〜2022年の間、国内の合同会社(LLC)の新設件数は毎年3万件を超える水準で推移しており(法務省登記統計より)、フリーランスや個人事業主が手軽に法人化できる環境が整ったのは確かです。

ところが、設立してから2〜3年が経過すると「思ったほど節税にならなかった」「赤字でも税金が出ていく」という声が増え始めました。私が総合保険代理店に在籍していた頃(2015〜2020年頃)にも、法人成り直後の個人事業主から「やっぱり戻れますか?」と聞かれたことが何度もありました。

「戻れる」は正しいが「タダでは戻れない」が現実

法的には、法人を解散・清算して廃業し、改めて個人事業主として開業届を出すことは可能です。しかし「戻る」という表現が与える軽いイメージとは裏腹に、時間・費用・信用の3つでかなりのコストを払う必要があります。

以下で紹介する7つのデメリットを順番に理解することで、「本当に戻るべきか、それとも別の手段があるか」を冷静に判断できるようになります。まずは法人解散コストの全体像から見ていきましょう。

【実体験】私が法人維持コストで痛い目を見た話

東京で民泊法人を立ち上げて最初の決算で気づいた現実

私は現在、東京都内でインバウンド向けの民泊事業を法人(株式会社)で運営しています。法人を設立したのは、宅建士の資格と保険代理店での経験を活かして不動産賃貸業を本格化させるためでした。設立自体は正解でしたが、最初の決算を迎えた時に「これが均等割か……」と正直凍りつきました。

東京都の場合、法人住民税の均等割は赤字であっても年間で最低7万円(区市町村分と都道府県分の合計)が発生します。民泊はインバウンド需要に左右されるため、コロナ禍の2020年は売上がほぼゼロでした。それでも均等割だけは容赦なく請求が来て、「これを避けるために個人事業主に戻す人の気持ちが初めてわかった」と思ったのを覚えています。

保険代理店時代に見た「法人成り後悔」の典型パターン

総合保険代理店に在籍していた3年間で、私は個人事業主・フリーランスの資金相談を数多く担当しました。その中で特に印象に残っているのが、Webデザイナーとして独立した30代のクライアントのケースです(個人を特定できないよう詳細は変更しています)。

彼は年商が600万円を超えたタイミングで税理士の勧めで法人成りしました。ところが翌年から案件が減り、年商が350万円台に落ち込みました。法人の維持費(税理士報酬・社会保険・均等割)だけで年間80万円以上が出ていき、手元に残るお金が法人成り前より明らかに減っていたのです。「戻せますか」と相談に来た時、私はまず「解散にもお金がかかる」という事実を伝えるところから始めました。その時の彼の表情が今でも忘れられません。

解散・清算の実コストと清算手続きの重さ

デメリット①②③:登記費用・専門家報酬・清算期間の3重苦

法人を解散して個人事業主に戻る際に避けられないのが、清算手続きの金銭的・時間的コストです。株式会社の場合、解散登記と清算結了登記で合計3〜4万円程度の登録免許税がかかります。さらに、清算手続きを司法書士や税理士に依頼すると、報酬として15〜30万円前後が一般的に必要になります(事務所によって異なるため、複数見積もりを取ることを推奨します)。

合同会社(LLC)の場合は登録免許税が株式会社より安くなりますが、清算手続きの複雑さは同様です。また、債権者保護手続きとして公告期間(最低2ヶ月)が法律上義務付けられているため、解散を決議してから清算結了まで、早くて3〜6ヶ月、案件が複雑なら1年以上かかるケースもあります。「今月解散して来月から個人事業主」とはならない点を強く意識してください。

デメリット④:未使用の繰越欠損金が全て消える

法人税法上、法人は最大10年間の繰越欠損金を持てます。赤字が出た年に翌年以降の黒字と相殺できるこの仕組みは、法人経営のメリットの一つです。しかし法人を解散した瞬間に、この繰越欠損金は個人に引き継げません。個人事業主として再スタートした後に売上が回復しても、過去の法人時代の損失はゼロ扱いになります。損失が数百万円規模にのぼる場合、これは実質的に大きな税負担増につながります。

社会的信用が下がる影響と取引先への実務的打撃

デメリット⑤:法人格消滅が取引先・金融機関の目に映るもの

個人事業主に戻ることが社会的信用に与える影響は、見た目以上に深刻です。特に法人との継続取引があるBtoB案件では、「法人契約→個人契約」への切り替えを拒否されたり、取引条件を再交渉される事例が少なくありません。

私が保険代理店時代に担当したあるITコンサルタントのケースでは、主要クライアントが「法人格がないと発注できない」という社内規定を持っており、法人解散後に実質的に受注がゼロになりかけました。その後、彼は急いで再び法人を設立し直すことになりましたが、設立コストとタイムロスを合わせると合計で50万円以上の損失になったと話していました。

デメリット⑥:金融機関の評価が一旦リセットされる

法人として融資実績や当座預金口座を持っていた場合、法人の解散によってそれらの信用履歴は断ち切られます。日本政策金融公庫や信用保証協会の審査においても、「法人の設立年数・決算実績」は重要な評価軸の一つです。個人事業主として再スタートした場合、事業開始からの年数がゼロに戻るため、融資審査でより厳しい条件を求められる可能性があります。

この点は、法人成り後悔として語られる文脈でもっと注目されるべきポイントです。「節税効果が薄かった」という損失だけでなく、「将来の資金調達力を失う」というリスクも同時に考える必要があります。独立1年目の失敗談|AFPが振り返る5つの反省点

税負担と均等割の逆転——個人に戻れば楽になるは本当か

デメリット⑦:個人事業主に戻ると社会保険料が上がる場合がある

「法人を解散すれば均等割がなくなる」は正しいです。しかし、個人事業主になると国民健康保険料の負担が増える可能性があります。法人の役員として社会保険(健康保険・厚生年金)に加入していた場合、保険料の半分は法人が負担していました。個人事業主に戻ると、健康保険は国民健康保険に切り替わり、保険料の全額を自分で払う形になります。

国民健康保険料は前年の所得を基準に算定されるため、法人時代の役員報酬水準によっては年間の保険料負担が増えるケースがあります。一般的な目安として、年収500万円前後の場合、法人の社会保険と国民健康保険の差は年間30〜60万円程度になることがあります(所得・扶養状況・居住自治体によって個人差があります。具体的な金額は社会保険労務士や税理士への相談を推奨します)。

均等割が「重荷」なら解散より休眠も選択肢になる

「均等割が払えない、でも解散コストも払えない」という二重苦に直面している場合、法人を休眠状態にする選択肢も検討する価値があります。休眠法人として届け出ることで、一部の自治体では均等割が軽減・免除される場合があります。ただし、すべての自治体で同様の対応があるわけではないため、所在地の都道府県・市区町村に確認することが必要です。

また、売上規模によっては法人を維持しながら自分自身への役員報酬をゼロにし、法人コストを最小化する戦略も有効です。この点は税理士との相談なしに判断するのは危険で、私自身も民泊法人の利益が落ち込んだ時期に税理士と綿密に話し合いながら対応を決めました。会社員からフリーランスへ独立|3ヶ月の準備リスト

戻る前に検討すべき3つの代替案とまとめ

7つのデメリットをおさらい

  • デメリット①:解散登記・清算結了登記で登録免許税3〜4万円前後が発生する
  • デメリット②:司法書士・税理士への清算手続き報酬として15〜30万円前後が必要になる場合がある
  • デメリット③:債権者保護手続きにより清算完了まで最低2〜6ヶ月かかる
  • デメリット④:法人で積み上げた繰越欠損金が個人に引き継げず消滅する
  • デメリット⑤:取引先・金融機関からの法人格信用が失われ、受注条件が悪化する可能性がある
  • デメリット⑥:融資実績・信用履歴が断ち切られ、再融資審査が厳しくなる可能性がある
  • デメリット⑦:社会保険から国民健康保険への切り替えで年間保険料負担が増える可能性がある

それでも戻るなら開業届の準備を最初に動かす

7つのデメリットを理解した上で「それでも個人事業主に戻る」と決断したなら、清算手続きと並行して開業届の準備を早めに進めることが大切です。法人の清算が完了してから個人の開業届を出していると、国民健康保険・国民年金の加入手続きや、取引先への連絡対応が一気に重なって混乱します。

私が推奨しているのは、清算手続きの専門家(司法書士・税理士)との契約と同時に、個人事業主としての開業準備を動かしておくことです。屋号・業種・開業日を決め、税務署への開業届をあらかじめ作成しておくと、清算結了後すぐに個人事業主としての活動をスムーズに始められます。開業届はフォーム入力で作成できるサービスを使うと、記載ミスのリスクを下げることができます。

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筆者:Christopher/AFP・宅地建物取引士。大手生命保険会社2年、総合保険代理店3年を経て、個人事業主・フリーランスの資金相談を多数担当。現在は東京都内で法人を経営し、インバウンド向け民泊事業を運営中。

【免責事項】
本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の投資・税務・法務行為を推奨するものではありません。記載内容は執筆時点の情報に基づきますが、最新情報や個別具体的な判断については、各分野の専門家(税理士・弁護士・宅建士・FP等)または公的機関にご相談ください。

【執筆・監修】
Christopher(AFP / 宅建士 / TLC)- 金融・不動産・法人実務の実体験ベースで執筆

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