青色申告で赤字が出た年、「このマイナスをどう活かせばいいのか」と戸惑う個人事業主は少なくありません。私はAFP・宅建士として、保険代理店時代に500人超のフリーランス相談を受けてきました。その経験から断言できますが、青色申告の赤字繰越3年制度のやり方を正しく理解するだけで、翌年以降の税負担を大きく軽減できる可能性があります。この記事では第四表の記入手順から繰越失敗事例まで、実務視点で丁寧に解説します。
赤字繰越3年制度の基本ルール
純損失の繰越控除とはどんな制度か
青色申告者が事業所得・不動産所得などで損失(赤字)を出した場合、その純損失を翌年以降最大3年間にわたって黒字所得から差し引けるのが「純損失の繰越控除」です。所得税法第70条に根拠があり、白色申告では原則として利用できません。
具体的なイメージで説明します。2024年に事業で150万円の赤字が出たとします。2025年に100万円の黒字になれば、繰越した150万円のうち100万円を控除し、課税所得をゼロに近づけることができます。残る50万円はさらに2026年まで繰り越せます。この仕組みを使うことで、開業初年度などに多い赤字年を税務上「無駄にしない」ことが可能になります。
繰越できるのは最長3年間です。4年目以降に繰り越すことはできないため、毎年の申告をミスなく継続することが前提条件になります。
白色申告との決定的な違い
白色申告者が純損失を翌年以降に繰り越せるのは、変動所得(漁獲・印税など)や被災事業用資産の損失に限られます。一般的なフリーランスのWebデザインやITエンジニア案件による事業赤字は、白色申告では繰り越せません。
青色申告は手間がかかると敬遠されがちですが、純損失の繰越控除・青色申告特別控除(最大65万円)・専従者給与の経費計上など、得られるメリットは税負担の軽減に直結します。私が保険代理店に勤めていた頃、「開業2年目に初めて黒字になったのに税金が思ったより少なかった」と喜んだフリーランスのお客様がいました。理由を聞くと、前年の赤字をきちんと繰り越していたからでした。白色申告のまま手続きしていたら、その恩恵はゼロだったわけです。
青色申告で赤字繰越を使うための前提条件
税務署への届出と期限を確認する
純損失の繰越控除を受けるには、損失が発生した年に青色申告を行っていることが大前提です。青色申告をするには、開業から2か月以内、または前年の3月15日までに「青色申告承認申請書」を所轄税務署へ提出していなければなりません。
期限を過ぎていた場合、その年は白色申告しか選べず、純損失の繰越控除は利用できません。私自身、東京都内で法人を設立して民泊事業を始めた際、法人の青色申告承認申請書の提出期限を確認するために税理士と何度もすり合わせをしました。個人事業主でも法人でも、この「申請書の期限管理」は思いのほか見落としやすいポイントです。
繰越期間中は毎年申告を継続する義務がある
繰越控除を受けるためには、損失が発生した年だけでなく、繰越期間中(翌年・翌々年・3年後)も毎年確定申告を行う必要があります。仮に繰越2年目の申告を忘れてしまうと、その年の繰越権利が失われてしまいます。
「赤字だから申告しなくていい」という誤解が意外と多いのも事実です。保険代理店時代の相談で、開業2年目に売上ゼロ近くで「申告不要だろう」と考えて無申告にした30代のフリーランス男性がいました。翌年黒字になった際に繰越控除を使おうとしたところ、税務署から「前年の申告がないため繰越は認められない」と指摘を受けたのです。結果的にその年の税負担が数十万円単位で増えました。毎年の申告継続は、この制度の命綱です。
第四表の具体的な記入手順
第四表(損失申告用)の構成を理解する
損失申告を行う年には、確定申告書の「第四表(損失申告用)」を作成します。第四表は「損失額又は所得金額」「翌年以後に繰り越す損失額」「繰越損失額の控除」の3つのブロックで構成されています。
第四表の(一)欄には、その年の各種所得の金額または損失額を記入します。事業所得がマイナスであれば、マイナスの数字をそのまま記入します。次に(二)欄で翌年以降に繰り越す損失額を算出します。ここで記入した金額が、翌年以降の控除の元になります。
国税庁の確定申告書等作成コーナーを使えば、数字を入力するだけで第四表が自動計算されます。ただし、入力する所得区分を間違えると計算が狂います。事業所得と雑所得を混同しないよう注意が必要です。法人化せず節税できる10の方法|フリーランス必読
翌年申告時の第四表(三)欄への記入方法
前年に損失を繰り越した場合、翌年の確定申告では再び第四表を作成し、(三)欄「翌年以後に繰り越す損失額の控除」に繰越額を記入します。この欄に前年の繰越損失額を入力することで、当年の黒字所得から自動的に差し引かれます。
注意点が一つあります。第四表(三)欄に記入できる繰越損失額は、当年の所得金額を超えることができません。たとえば繰越損失が200万円あっても、当年の所得が80万円であれば控除できるのは80万円までです。残り120万円は翌年以降にまた繰り越します。この計算を誤ると過大控除になり、税務調査のリスクが生じます。概算での計算には限界がありますので、具体的な金額の確認は税理士など専門家への相談をお勧めします。
翌年以降の控除と注意点
青色申告特別控除との併用で効果を最大化する
純損失の繰越控除と青色申告特別控除(最大65万円)は、同じ年に両方使うことができます。仮に翌年の事業所得が200万円で、繰越損失が100万円ある場合、まず純損失の繰越控除で100万円を差し引いて所得を100万円にした後、青色申告特別控除65万円を適用して課税所得を35万円まで圧縮できます。
ただし、青色申告特別控除の65万円控除を受けるには、複式簿記による記帳・貸借対照表の添付・e-Taxによる申告または電子帳簿保存のいずれかの要件を満たす必要があります。10万円控除の場合はこの条件が緩和されますが、節税効果は大きく下がります。私が民泊事業の法人決算で気付いたのですが、会計ソフトを使って複式簿記を自動化している事業者とそうでない事業者では、年末の申告作業の負担に圧倒的な差が出ます。
繰越控除を受ける年に注意すべき3つのポイント
第一に、繰越控除を受ける年も必ず青色申告を継続することです。白色申告に切り替えた年は、その時点で繰越権利が消滅します。第二に、所得の種類を正しく把握することです。事業所得の赤字は給与所得や不動産所得と損益通算できる場合がありますが、所得区分によってルールが異なります。第三に、繰越年数の管理です。損失が発生した年を起点に3年以内に控除しきれなかった分は消滅するため、年ごとに「何年目の損失がいくら残っているか」を台帳で管理することを強くお勧めします。
この台帳管理を怠った結果、3年目に繰越残額を誤って少なく記入し、本来受けられるはずの控除を自ら放棄してしまった事例を、保険代理店時代の相談業務で複数件見てきました。金額にして数万円から十数万円の損失になるケースもあります。開業1年目の確定申告|注意すべき5つのポイント
私が見た繰越失敗3事例と対処法
保険代理店時代に相談で見た典型的なミス
私がAFPとして総合保険代理店に勤務していた3年間で、個人事業主・フリーランスから受けた資金相談は延べ500人を超えます。その中で純損失の繰越控除に関する失敗事例は大きく3パターンに集約されました。
事例①:第四表の提出漏れ
赤字の年に確定申告書の第一表・第二表だけを提出し、第四表を添付しなかったケースです。第四表がなければ損失申告が成立しないため、翌年に繰越控除を使おうとしても認められません。修正申告で対応できる場合もありますが、期限を過ぎると手続きが複雑になります。
事例②:繰越年数の勘違い
「3年繰り越せる」を「3年後まで使える」と解釈したフリーランスの方が複数いました。正確には損失発生年の翌年から3年間が期限です。2022年の損失は2025年分(2026年3月申告)まで。この1年のズレを間違えると、控除可能な年に申告しそびれることになります。
事例③:雑所得と事業所得の混同
副業収入を事業所得として申告していたが、実態は雑所得と判断されるケースです。雑所得の赤字は原則として損失申告の対象外であり、純損失の繰越控除には使えません。事業所得として認められるには、継続性・営利性・独立性が求められます。副業規模の収益を事業所得で申告する場合は、税務調査リスクも踏まえて専門家への相談を強くお勧めします。
私自身が痛い目を見た繰越管理の失敗
実は私自身も、個人事業主として活動していた頃に繰越管理で痛い目を見た経験があります。当時、事業所得と不動産収入を混在させた帳簿を手作業でExcel管理していました。2年目の損失繰越額をうっかり前年分と合算して記入してしまい、税理士に確認してもらった際に「これは過大控除になる可能性がある」と指摘されたのです。
修正自体はすぐ終わりましたが、そのとき確認のために費やした時間と焦りは今でも覚えています。その反省から、翌年以降は会計ソフトに完全移行しました。繰越損失の残高が自動で引き継がれるため、入力ミスのリスクが大幅に下がりました。帳簿は「正確に残すもの」ではなく「正確に引き継ぐもの」だと、その経験で身に染みて理解しました。
まとめ:赤字繰越3年制度を正しく使い切るために
この記事で押さえるべきポイント
- 純損失の繰越控除は青色申告者のみが使える制度で、最長3年間の繰越が可能
- 損失発生年に第四表(損失申告用)を確定申告書に添付することが必須
- 繰越期間中も毎年確定申告を継続しなければ、繰越権利が失われる
- 青色申告特別控除(最大65万円)との併用で課税所得をさらに圧縮できる可能性がある
- 繰越残額は年ごとに台帳で管理し、3年の期限を正確に把握することが重要
- 事業所得と雑所得の区分ミスは損失申告の根幹を崩すため、所得区分の確認を怠らない
- 具体的な税額・控除額の計算は個人差があるため、税理士など専門家への相談を推奨する
記帳の自動化で繰越管理ミスをゼロに近づける
青色申告の赤字繰越3年制度のやり方を正しく実践するには、毎年の申告を確実につなぐ「記帳の継続性」が命綱です。私が民泊事業の法人運営と個人事業主の両方を経験してきた中で、最も実感しているのは「手作業の帳簿は必ずどこかでミスをする」という現実です。
繰越損失の残高を自動で管理し、第四表の数字とも連動させるには、クラウド会計ソフトの活用が最も現実的な選択肢の一つです。銀行口座・クレジットカードと連携して仕訳を自動化できるため、記帳漏れや転記ミスのリスクを大幅に下げることができます。損失申告を正確に、そして継続的に行うための土台として、まず無料トライアルから試してみることを検討してみてください。
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本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の投資・税務・法務行為を推奨するものではありません。記載内容は執筆時点の情報に基づきますが、最新情報や個別具体的な判断については、各分野の専門家(税理士・弁護士・宅建士・FP等)または公的機関にご相談ください。
【執筆・監修】
Christopher(AFP / 宅建士 / TLC)- 金融・不動産・法人実務の実体験ベースで執筆
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