「どうせ赤字だから確定申告しなくていいか」と思っていませんか。私はAFP(日本FP協会認定)として保険代理店勤務時代に500人以上の個人事業主・フリーランスの資金相談を受けてきましたが、赤字年に申告を怠ったことで翌年以降に大きな損をしている方を何度も目にしてきました。赤字でも確定申告するメリットは確実に存在します。この記事では個人事業主節税の観点から、申告することで得られる5つの実益を具体的に解説します。
赤字でも申告すべき5つの理由:個人事業主が知っておきたい基本
理由①〜③:損失の繰越・還付・融資審査
まず結論から言います。赤字の年こそ確定申告は「義務」ではなく「権利」です。申告しないと、その権利を丸ごと捨てることになります。
一つ目は純損失の繰越控除です。青色申告をしている個人事業主であれば、赤字(純損失)を翌年から最長3年間にわたって繰り越せます。たとえば2024年に100万円の赤字が出て、2025年に150万円の黒字になった場合、繰越損失を差し引いた50万円が課税所得の基準になります。これだけで所得税・住民税の負担が大幅に変わります。
二つ目は源泉徴収された税金の還付です。クライアントから報酬を受け取る際に10.21%の源泉徴収をされているフリーランスの方は多いです。年間を通じて赤字だった場合、申告することでその源泉徴収額が戻ってくる可能性があります。申告しなければ、払い過ぎた税金はそのまま国のものになってしまいます。
三つ目は融資審査での「決算書」の役割です。日本政策金融公庫などの融資審査では、過去の確定申告書(決算書)の提出が求められます。赤字であっても申告書類が揃っていることで「事業を継続的に管理している」という信頼につながります。私が保険代理店時代に相談を受けた30代のWebデザイナーの方は、赤字年に申告をしていなかったために、翌年の創業融資審査で書類不備とみなされ審査が大幅に遅れた、という経験をされていました。
理由④〜⑤:住民税・国保の軽減と給付金受給資格
四つ目は住民税と国民健康保険料の軽減です。住民税も国民健康保険料も、原則として前年の所得をベースに計算されます。赤字であることを申告によって証明することで、住民税の均等割のみの負担に抑えられるケースや、国保の保険料が軽減される可能性があります。これについては後の章で詳しく解説します。
五つ目は各種給付金・補助金の受給資格です。2020年以降、持続化給付金や各自治体の支援制度など、確定申告の提出を受給条件としている制度が多数登場しました。申告書がないと、いざという時に支援を受けられない事態になりかねません。「まさかこんな制度が出るとは思わなかった」という声は、保険代理店時代だけでなく、今も私の周囲で聞こえてきます。
私が赤字年に節税できた実例:個人事業主5年目の体験談
民泊立ち上げ初年度に直面した赤字と純損失繰越の活用
私自身の話をします。私は現在、東京都内で法人を経営しインバウンド向け民泊事業を運営していますが、事業を立ち上げた初年度は設備投資と内装工事で300万円以上の支出が先行し、売上がそれに追いつかない状態が続きました。
具体的には、東京都内の物件に対して内装・家具・消防設備の整備などで約320万円を投じ、初年度の売上は約180万円。差し引きで140万円近い赤字になりました。正直なところ「これは申告しても意味がないのでは」と一瞬思いましたが、AFP資格を持つ身として、それが間違いであることは当然わかっていました。
この赤字を青色申告で申告し、純損失として繰り越したことで、翌年に事業が軌道に乗り黒字転換した際の課税所得を大きく圧縮できました。繰越控除を適用した結果、翌年の所得税・住民税の合計負担額は、適用しなかった場合と比べて一般的な試算で数十万円単位の差が生じます(個人の状況によって異なりますので、正確な金額は税理士にご確認ください)。
あの初年度に申告を怠っていたら、と思うとぞっとします。「赤字だから申告しなくていい」という発想がいかに損かを、自分の事業で身をもって体感しました。
保険代理店時代に見た「申告漏れ」の実例
総合保険代理店に勤務していた3年間で、個人事業主の方から資金繰り相談を受ける機会が非常に多くありました。なかでも印象に残っているのは、フリーランスのカメラマンとして活動していたある方の事例です(個人を特定できない形で抽象化しています)。
その方は開業2年目に機材のまとめ買いで大きな赤字が出たにもかかわらず、「どうせ赤字だし面倒だから」と申告を見送りました。翌年に収入が回復したものの、繰越損失がないため税負担が重くなり、さらに国民健康保険料の軽減も受けられなかったため、手元資金が想定より早く枯渇してしまったのです。
相談を受けた時点ではすでに申告期限を過ぎており、打てる手が限られていました。「あの年に申告さえしていれば」という後悔は、資金繰りだけでなく精神的にも大きな負担になっていたようでした。この経験が、私が「赤字でも申告する意義」を強く発信するようになった原点の一つです。
青色申告の純損失3年繰越の威力:仕組みと活用法
純損失繰越控除の計算イメージ
純損失の繰越控除は、青色申告を選択している個人事業主だけが使える強力な制度です。白色申告でも変動所得・被災事業用資産の損失については繰越が認められますが、対象が限定的なため、多くの場合は青色申告の優位性が際立ちます。
計算の流れはシンプルです。2023年に80万円の純損失が出て、2024年に200万円の黒字になったとします。繰越控除を適用すると、2024年の課税所得は200万円-80万円=120万円です。所得税の税率は所得金額によって変わりますが、課税所得が195万円以下の場合は5%、195万円超330万円以下は10%となっています(2024年時点の一般的な速算表に基づく参考値です。個人の状況によって異なりますので、詳細は税理士や国税庁のWebサイトでご確認ください)。
単純計算でも、課税所得が80万円圧縮されるだけで数万円単位の節税効果が見込まれます。しかも3年間繰り越せるため、2023年の損失は2024年・2025年・2026年の黒字と順次相殺できます。この仕組みを知っているかどうかで、個人事業主節税の質が大きく変わります。
繰越に必要な手続きと青色申告の維持
重要なのは、純損失を繰り越すためには赤字の年にも必ず確定申告を行う必要があるという点です。赤字年の申告を1回でも怠ると、その年の損失は繰り越せません。翌年以降の黒字と相殺する権利が消滅するわけです。
また、青色申告の承認を継続して受けている必要があります。開業届とともに「青色申告承認申請書」を税務署に提出し(原則として開業日から2ヶ月以内、または1月15日以前に開業した場合はその年の3月15日まで)、承認を維持し続けることが前提です。
帳簿の記帳も義務になりますが、この点については後述するクラウド会計ソフトを活用することで、日々の作業負担をかなり軽減できます。私自身も法人の経理と個人の記帳を並行して管理しており、ツールの選択が時間コスト削減に直結すると実感しています。法人化せず節税できる10の方法|フリーランス必読
住民税と国保が下がる仕組み:赤字申告で生活コストを抑える
前年所得ゼロが住民税・国保に与える影響
赤字申告のもう一つの大きなメリットが、住民税と国民健康保険料への影響です。両方とも前年の所得をベースに計算される仕組みになっています。
住民税は「均等割」と「所得割」の2本立てです。前年所得が一定以下であれば所得割はゼロになり、均等割のみの負担(自治体によって異なりますが、目安として年間5,000円前後)に抑えられます。さらに、前年所得が一定の基準(市区町村によって異なる)を下回ると均等割も非課税になる場合があります。赤字申告によって所得をゼロと届け出ることで、この非課税ラインに該当する可能性が出てきます。
国民健康保険料についても同様です。所得割の部分がゼロになることで、均等割・平等割のみの負担となります。さらに、前年所得が一定の基準以下の場合、均等割・平等割が7割・5割・2割のいずれかの割合で軽減される制度があります(軽減基準は毎年改定されることがあります。詳細はお住まいの市区町村の窓口でご確認ください)。
申告をしない場合、市区町村が所得を把握できないため、軽減措置が適用されないケースがあります。つまり赤字申告をすることは、翌年の生活コストそのものを抑えることに直結するのです。
軽減効果の目安と申告タイミングの注意点
軽減効果は居住する市区町村や家族構成によって異なりますが、単身の個人事業主が東京23区内に住む場合を例にとると、国保料の軽減幅は年間で数万円単位になることが一般的です。複数年にわたって赤字が続く場合は、この差が累積するため、申告の有無による生活費への影響は無視できません。
注意点として、住民税・国保の軽減を翌年に正しく反映させるには、原則として3月15日の確定申告期限内に申告を完了させることが重要です。期限後申告でも軽減が適用されるケースはありますが、手続きが複雑になる場合があります。期限内申告を習慣にすることが、最もシンプルで確実な方法です。
また、住民税の申告は確定申告と別に行う必要がある自治体もありますが、確定申告書を提出すれば住民税申告を兼ねる場合が多いです。詳細はお住まいの市区町村にご確認ください。開業1年目の確定申告|注意すべき5つのポイント
申告漏れで損した相談事例とまとめ:今すぐ行動すべき理由
赤字確定申告のメリット5つを整理する
ここまで解説してきた内容を整理します。赤字でも確定申告する個人事業主が得られるメリットは、以下の5つです。
- 純損失の繰越控除(最長3年):翌年以降の黒字と相殺して課税所得を圧縮できる
- 源泉徴収税額の還付:払い過ぎた税金を取り戻せる可能性がある
- 融資審査での信頼性確保:継続的な事業管理の証明として機能する
- 住民税・国民健康保険料の軽減:前年所得の証明によって翌年の負担を抑えられる
- 給付金・補助金の受給資格維持:申告書の有無が支援制度の利用可否を左右する
どれか一つでも当てはまるなら、申告しない理由はありません。特に青色申告の純損失繰越は、事業初期や設備投資の多い年には絶大な威力を発揮します。私自身が民泊立ち上げ時に実感した通りです。
面倒な帳簿づくりはクラウドで解決して申告を習慣化しよう
「申告したいけれど帳簿が面倒で」という声は、保険代理店時代から今も変わらず耳にします。その悩みを解消するのがクラウド会計ソフトです。銀行口座やクレジットカードと連携することで取引を自動で取り込み、確定申告書類の作成まで一気通貫でサポートしてくれます。
私が法人の経理と並行して個人の記帳管理にも活用しているのは、入力の手間を最小化しながら証憑管理もできるクラウド型のサービスです。赤字年でも、むしろ赤字年だからこそ、正確な帳簿と申告が将来の節税に直結します。まだ会計ソフトを使っていない方は、まず無料プランから試してみることをおすすめします。
申告を習慣化するための第一歩として、ぜひ下記のサービスを検討してみてください。個人差はありますが、多くの個人事業主が「入力の時間が大幅に減った」と感じています。専門家(税理士)への相談と組み合わせることで、より確実な節税対策が期待できます。
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本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の投資・税務・法務行為を推奨するものではありません。記載内容は執筆時点の情報に基づきますが、最新情報や個別具体的な判断については、各分野の専門家(税理士・弁護士・宅建士・FP等)または公的機関にご相談ください。
【執筆・監修】
Christopher(AFP / 宅建士 / TLC)- 金融・不動産・法人実務の実体験ベースで執筆
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