「てっきり対象経費だと思っていたのに、採択後の確認で対象外と指摘された」——小規模事業者持続化補助金の申請現場では、こうした声が後を絶ちません。私自身、東京都内でインバウンド向け民泊事業を運営する法人の代表として申請準備を進める中で、経費の対象・対象外の境界線に何度も悩みました。AFP(日本FP協会認定)として資金相談を重ねてきた立場から、持続化補助金の経費対象外になりやすい注意点を実務ベースで解説します。
持続化補助金の「対象外経費」とは何か
補助対象経費の基本的な考え方
小規模事業者持続化補助金において「補助対象経費」とは、採択された補助事業計画に直接紐づいた経費のことです。日本商工会議所が公表している公募要領(2024年度第16回公募版)では、対象経費の区分として「機械装置等費」「広報費」「ウェブサイト関連費」「展示会等出展費」「旅費」「開発費」「資料購入費」「雑役務費」「借料」「設備処分費」「委託・外注費」の11区分が明示されています。
裏を返せば、これらの区分に当てはまらない支出は、原則として補助対象外です。さらに、区分内に該当しても「補助事業との関連性が薄い」「汎用性が高い」と判断されれば対象外になります。ここが最も多くの申請者が見落とすポイントです。
「対象外」と判断される主な基準
公募要領には、補助対象外経費として明確に列挙されている項目があります。代表的なものを整理すると、①補助事業に関係のない経費、②汎用性が高く目的外使用が可能なもの、③在庫購入費、④人件費(一部例外を除く)、⑤消費税などが挙げられます。
「汎用性が高い」という概念が曖昧に感じるかもしれませんが、要は「補助事業が終わっても別の用途で使い続けられるもの」と解釈すると分かりやすいです。パソコンやスマートフォンが典型例で、後ほど詳しく説明します。なお、補助金の採否・経費判断は商工会・商工会議所や採択事務局が行うものであり、個別の判断は必ず担当窓口に確認することを推奨します。
対象外になりやすい5つの項目——私が申請準備で実際に迷った経費
①汎用品(パソコン・スマートフォン・タブレット)
私が民泊事業の補助金申請を準備していた際、最初に壁にぶつかったのがこの「汎用品」問題でした。インバウンド向けのチェックイン案内動画を作るためにタブレットを購入しようと考え、「広報費として計上できるのでは」と担当の商工会議所の職員に相談したところ、即座に「対象外です」と言われました。
公募要領では、パソコン・スマートフォン・タブレット端末は汎用性が高いとして原則補助対象外と明示されています。補助事業専用に使う意図があっても、物理的に別用途へ転用できるため認められないのです。「補助事業のためだけに使う」という主張が通らない点は、多くの申請者が最初に驚くポイントでしょう。
②人件費(自社従業員・本人の作業費)
「補助事業のためにスタッフが作業した時間分の人件費を計上できますか?」という質問は、保険代理店に勤めていた頃、フリーランスや個人事業主の方から本当に多く受けた相談です。当時の私も「実質的な費用なのに認められないのは不合理では」と感じていました。
しかし答えはシンプルで、原則として対象外です。自社従業員への給与・賃金、そして申請者本人の作業費は補助対象経費に含まれません。例外的に「雑役務費」として一部の軽微な作業補助が認められるケースもありますが、条件が厳しく、事前に商工会・商工会議所との十分な確認が必要です。フリーランスが「自分の作業時間を外注費として計上しよう」と考えるケースもありますが、これは認められません。
③在庫・原材料の仕入れ費用
飲食店や物販事業者の方が特に誤解しやすいのが、在庫・原材料の仕入れ費用です。「新メニューを開発するための食材費を開発費に入れた」という事例を、代理店時代の相談の中で複数回耳にしました(個人が特定されない形での紹介です)。
残念ながら、在庫として残る可能性のある原材料や商品の仕入れは補助対象外です。「消耗して残らないもの」という観点が一つの基準ですが、その判断も申請内容と事業内容によって変わります。「サンプルとして展示会に持っていくための試作品コスト」などは交渉の余地があるケースもあるため、必ず事前に窓口へ相談することが大切です。
④補助事業期間外に発生した経費
持続化補助金には補助事業の実施期間が定められており、その期間外に発生した経費は補助対象外となります。採択通知が届く前に先走って購入した機材や、補助事業期間終了後に発注した印刷物なども対象外です。
私自身、民泊事業の整備を急ぐあまり「採択されたら買おう」と思っていたものを「どうせ採択されるだろう」と期間前に購入しそうになった経験があります。申請代行を依頼した社労士の方に「それは絶対にやめてください」と止めていただいて本当に助かりました。採択通知の日付と発注日・納品日・支払日の3点が補助事業期間内に収まっているか、細心の注意が必要です。
⑤消費税・公租公課・罰金・借入金の返済
意外と見落とされがちなのが消費税の扱いです。原則として、補助金の経費計上は税抜き金額が基本です。課税事業者であれば仕入税額控除が受けられるため、消費税分を上乗せして計上することはできません。免税事業者の場合は取り扱いが異なるため、公募要領と窓口の指示を必ず確認してください。
また、借入金の返済・利子、罰金・違約金なども当然補助対象外です。「補助金で借入の一部を返せないか」という相談も過去に受けたことがありますが、これは補助金の趣旨から外れており、認められません。
500人の資金相談で見た失敗事例——保険代理店時代に気づいたこと
「採択されてから経費を決める」という致命的な誤解
総合保険代理店に勤めていた3年間で、フリーランスや個人事業主の方から延べ500人ほどの資金相談を受けました(概算です)。その中で補助金に関する相談も少なくなかったのですが、最も多かった誤解が「採択されてから経費の中身を考えればいい」という発想です。
持続化補助金では、補助事業計画書に記載した取り組みに紐づいた経費しか認められません。採択後に「やっぱりこちらの経費に変えたい」という変更は原則として認められず、計画書の内容と実績報告の整合性が厳しくチェックされます。「採択=自由に使える」ではなく、「採択=計画書通りに実行する義務を負う」という認識が必要です。
補助金と日常経費の「ごちゃ混ぜ」管理で実績報告が通らなかったケース
代理店時代に相談を受けた個人事業主の方(業種は伏せます)が、採択後の実績報告で大変苦労されたケースがありました。補助事業に関係する経費と日常的な事業経費を同じ銀行口座・クレジットカードで混在させて管理していたため、実績報告の際に「これは補助事業のための支出か、日常業務の支出か」の証明が非常に困難になってしまったのです。
補助金専用の銀行口座を開設し、補助事業に関する支払いはすべてそこから行うのが理想的です。私自身も民泊事業の資金は法人口座を分けて管理しており、補助金申請を意識した経費管理の習慣は、確定申告や融資審査の場面でも役立っています。2者間ファクタリングと3者間の違いと選び方個人事業主の資金管理と節税対策についてはこちらの記事も参考にしてください
申請前に確認すべき4つの判断軸
軸①〜③:「補助事業直結」「期間内」「汎用性なし」を必ずチェック
対象外経費のトラブルを避けるために、私が申請準備の際に使っている判断軸を紹介します。まず「その経費は補助事業計画書に記載した取り組みに直接必要か」という点が軸①です。「あったら便利」レベルでは通りません。
軸②は「採択通知日以降、補助事業期間内に発注・納品・支払いの3点がすべて完了するか」です。1日でもずれると対象外になるリスクがあります。軸③は「汎用性がないか(補助事業以外の目的で使い続けられないか)」の確認です。この3点をクリアしてから、次のステップへ進みましょう。
軸④:必ず商工会・商工会議所の窓口で事前相談する
最後の軸④は「迷ったら必ず商工会・商工会議所の担当者に事前相談する」ことです。これは精神論ではなく、実務上の最重要ステップです。公募要領は数十ページに及ぶ上、解釈が難しい部分も少なくありません。私も複数回窓口相談に行きましたが、その都度「一人で読んでいたら誤った判断をしていたな」と感じる場面がありました。
また、AFP資格の勉強を通じて学んだことですが、補助金・助成金の制度は改定頻度が高く、過去の情報が既に変わっているケースがあります。ネット上の情報や口コミではなく、公式の公募要領と担当窓口の指示を最優先にすることが、申請時の注意点として何より大切です。なお、補助金の採否や経費の可否について保証することはできません。個別の判断は必ず専門家や担当窓口にご確認ください。2社間ファクタリング個人事業主の注意点7選|相談500人で見た落とし穴持続化補助金の申請手順と採択率を上げるコツはこちら
まとめ:持続化補助金の対象外経費、申請前に押さえるべきポイント
対象外になりやすい5項目と4つの判断軸の振り返り
- ①汎用品(パソコン・スマートフォン・タブレット)は原則対象外
- ②自社従業員・申請者本人の人件費は対象外(一部例外あり)
- ③在庫・原材料の仕入れ費用は対象外
- ④補助事業期間外(採択通知前・期間終了後)に発生した経費は対象外
- ⑤消費税(課税事業者の場合)・罰金・借入金返済などは対象外
- 判断軸①:補助事業計画に直接紐づいているか
- 判断軸②:発注・納品・支払いが補助事業期間内に完結するか
- 判断軸③:汎用性が低く、目的外転用の余地がないか
- 判断軸④:商工会・商工会議所の窓口で事前確認済みか
補助金が採択されても「資金繰り」の不安は続く——手元資金の備えを忘れずに
小規模事業者持続化補助金は、原則として「後払い(精算払い)」です。つまり、補助事業に必要な経費をまず自己資金で全額立て替えてから、実績報告後に補助金が振り込まれます。補助率が3分の2だとしても、残りの3分の1は自己負担ですし、振込までの期間は数ヶ月に及ぶことも珍しくありません。
私自身、法人の資金繰り管理を通じて痛感しているのは、「補助金を当てにしすぎた計画は危うい」という点です。特にフリーランス・個人事業主の方は、クライアントからの入金サイクルによっては手元資金が一時的に枯渇するリスクがあります。補助金の申請と並行して、手元のキャッシュフローを守る手段を持っておくことが重要です。そこで検討する価値があるのが、報酬の即日払いサービスです。
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本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の投資・税務・法務行為を推奨するものではありません。記載内容は執筆時点の情報に基づきますが、最新情報や個別具体的な判断については、各分野の専門家(税理士・弁護士・宅建士・FP等)または公的機関にご相談ください。
【執筆・監修】
Christopher(AFP / 宅建士 / TLC)- 金融・不動産・法人実務の実体験ベースで執筆
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