株式会社の発起人複数で揉めた事例3つ|AFP5年が教える注意点7選

株式会社の発起人を複数にする際の注意点を、しっかり把握できていますか?「信頼できる仲間と一緒に会社を作ったのに、2年後には泥沼の対立に」——保険代理店時代に何度も聞かされたパターンです。私はAFP・宅地建物取引士として個人事業主やフリーランスの資金相談を通じ、株式会社設立の場面で出資比率・議決権の設計ミスによる共同創業トラブルを数多く見てきました。本記事では実例3つと注意点7選を具体的に解説します。

発起人複数の基本と法的位置づけ|株式会社設立 共同の前に押さえる土台

発起人とは何か:設立時の権限と義務

発起人とは、株式会社の設立を主導し、定款に署名・記名押印する人物のことです。会社法上、発起人は設立手続き全般に連帯して責任を負います。資本金の払い込み、定款の作成、設立登記の申請——これらすべてに発起人として関与するため、「名前だけ貸す」という感覚では後で必ず痛い目を見ます。

発起設立の場合、発起人は設立時に発行するすべての株式を引き受ける義務があります。複数の発起人が共同で引き受ける場合、誰が何株を持つかを定款作成の段階で明確にしておく必要があります。ここを曖昧にしたまま進めると、後述する出資比率トラブルの温床になります。

発起人を複数にするメリットと潜在リスク

複数の発起人で株式会社を立ち上げる最大のメリットは、資本金の分散と事業リスクの共有です。一人では用意しにくい資本金300万円を3人で100万円ずつ出し合えば、設立のハードルが下がります。スキルや人脈を持ち寄れる点も魅力です。

一方で、発起人複数の構造が持つリスクは見えにくいです。経営の意思決定に議決権が直結するため、持ち株比率の設計次第で「何も決められない会社」が生まれます。さらに、発起人の一人が退任・離脱した場合、残る発起人が株式を買い取る義務も資金も持っていなければ、外部の第三者に株が渡るリスクもあります。この発起人退任リスクを甘く見ている人が、私の経験上とても多いです。

複数発起人で揉めた実例3つ|保険代理店時代と自身の法人設立経験から

実例①「50:50」の出資比率で何も決められなくなった共同創業

総合保険代理店に勤めていた3年目の頃、ある相談者(40代・Webデザイン系フリーランス)から話を聞きました。彼は旧友と2人で株式会社を立ち上げ、出資比率を50:50に設定していました。「対等なパートナーシップ」を意識した判断でしたが、新しいサービス展開の議決で真っ二つに割れ、取締役会が機能停止状態になったのです。

株主総会の普通決議は過半数が必要です。50:50では誰も過半数を取れないため、互いに拒否権を持ち続ける状態になります。結果として、事業の重要な転換を1年以上先送りにせざるを得なくなりました。当事者は「対等にしたかっただけなのに、こんなことになるとは思っていなかった」と悔しそうに話していたのが今でも印象に残っています。解決策は、どちらかが1株でも多く持つか、定款に「代表取締役が最終決定権を持つ条項」を設けることです。

実例②「出資だけ」の発起人が経営に口を出してきたケース

同じく保険代理店時代、別の相談者(30代・IT系フリーランス)から相談を受けました。彼の共同創業者は「資金は出すが、経営は任せる」と言っていた投資家的な発起人でした。しかし会社が軌道に乗り始めると、出資比率40%を持つその発起人が経営方針に頻繁に介入し始めたのです。

40%という持ち株比率は、特別決議(3分の2以上の賛成が必要)を単独で阻止できる比率です。これを「拒否権パッケージ」と呼ぶ実務家もいます。つまり定款変更や組織再編など重要な決議を、その発起人一人でブロックできてしまいます。「経営は任せる」という口約束は法的拘束力を持ちません。発起人間の役割分担は、株主間契約書として書面化することが不可欠です。

実例③「退任した発起人の株」が外部流出しかけた退任リスク

私自身が東京都内で法人を経営し、インバウンド向け民泊事業を立ち上げる際に、共同で名を連ねるか検討した相手との協議で痛感した話です。2024年の準備段階で、私は相手との株式配分を詰める過程で、「もし途中で抜けたい時、株はどうする?」という問いを投げかけました。

相手は「その時はあなたに買い取ってもらえればいい」と軽く言いました。ところが、その「買い取り価格」の基準を誰も決めていなかったのです。設立後に事業が成長すれば株価は上がります。時価で買い取れるだけの現金を用意できる保証はありません。最終的に私は単独発起人で設立する判断をしました。この経験から、発起人退任リスクへの備えとして「株式の譲渡制限条項」と「発起人間の買取価格算定ルール」を定款・株主間契約に明記することの重要性を実感しました。

出資比率と議決権の決め方|発起人 複数 出資比率の設計原則

議決権比率が変わる3つの閾値を理解する

株式会社における議決権は、保有株式数に比例します。発起人複数で会社を設立する際、以下の3つの比率が特に重要な閾値になります。

  • 過半数(50%超):普通決議を単独で可決できる。取締役の選任・解任もここで決まる
  • 3分の2以上(約66.7%):特別決議を単独で可決できる。定款変更・合併・解散など重要事項に必要
  • 3分の1超(約33.3%超):特別決議を単独でブロックできる(拒否権として機能する)

発起人複数で出資比率を決める際は、この閾値を意識して設計してください。たとえば「創業者70%:共同発起人30%」なら、創業者は普通決議・特別決議ともに単独で可決できます。共同発起人は特別決議の拒否権を持てない分、経営の安定性は増します。どちらを優先するかは、事業の性質と信頼関係次第です。

株主間契約で「口約束」を法的効力のある書面に変える

発起人間の合意事項は、定款だけでカバーできないことがあります。そこで活用したいのが株主間契約(シェアホルダーズ・アグリーメント)です。これは発起人(株主)同士が締結する契約書で、登記には反映されないものの、法的効力を持ちます。

記載すべき内容としては、①株式の譲渡制限と優先買取権、②デッドロック(意思決定膠着)時の解決手順、③退任発起人の株式買取価格の算定方法、④競業避止義務の範囲——が挙げられます。弁護士費用を惜しんで作成を省略するケースが多いですが、後に生じるトラブルのコストと比較すれば、初期投資として合理的な選択です。独立1年目の失敗談|AFPが振り返る5つの反省点

7つの注意点を体験から解説|株式会社 発起人 複数 注意点の総整理

注意点①〜④:設立前に決めるべき4つの事項

注意点①:出資比率は「感情」ではなく「経営権」で決める
「仲が良いから対等に50:50」は危険です。経営上の意思決定を誰が最終的に行うかを軸に、比率を設計してください。代表取締役に過半数を持たせることが、多くの場合でスムーズな経営につながります。

注意点②:定款に譲渡制限条項を必ず入れる
中小企業の多くは「株式の譲渡は取締役会の承認を要する」旨を定款に記載しています。この条項がないと、発起人が第三者に株式を自由に売却できてしまいます。株式会社設立の共同を進める際は、定款作成の段階で確認してください。

注意点③:役員報酬の取り決めを書面化する
発起人がそのまま取締役になるケースでは、各人の役員報酬を事業計画と合わせて早期に明文化すべきです。「利益が出たら考える」では、後で必ず摩擦が生じます。私が保険代理店で相談を受けた事例の多くは、報酬格差への不満が発端でした。

注意点④:事業からの撤退条件を設計しておく
発起人退任リスクへの備えとして、「いつ・どのように・いくらで退出できるか」を株主間契約に明記します。特に事業が軌道に乗った後の買取価格算定は、EBITDA倍率や純資産方式など、客観的な指標を用いることをお勧めします。

注意点⑤〜⑦:設立後に直面しやすい3つの落とし穴

注意点⑤:発起人兼役員の「個人保証」問題
複数発起人で法人を設立し、金融機関から融資を受ける際、代表取締役だけでなく持ち株比率の高い発起人にも個人保証を求められるケースがあります。日本政策金融公庫の新創業融資制度(一般的に無担保・無保証人で利用できるとされています)を除けば、金融機関の方針次第です。発起人全員が保証債務のリスクを理解しているか、事前に確認してください。

注意点⑥:議決権行使の「不参加リスク」
発起人が複数いると、株主総会での決議に特定の発起人が参加しないケースが生じます。定款で「書面決議(みなし総会)」を認めておくと、全員集合できない状況でも迅速な意思決定が可能です。特に発起人が東京以外に在住している場合は重要です。

注意点⑦:税務・会計の役割分担を曖昧にしない
複数発起人で設立した会社では、経理・税務申告の担当が曖昧になりがちです。税理士への依頼を含め、「誰が・いつ・何を管理するか」を創業時に決めておいてください。私自身、民泊法人の1期目決算で、記帳担当が不明確だったために仕訳の整合性確認に余計な時間がかかった経験があります。この件は今でも反省点として残っています。なお、個別の税額や控除額については専門の税理士に相談されることをお勧めします。会社員からフリーランスへ独立|3ヶ月の準備リスト

単独発起人との比較と判断軸|まとめとCTA

複数発起人と単独発起人を選ぶ3つの判断軸

  • 資金調達力:一人では必要資本金を準備できない場合は複数発起人が現実的な選択肢です。ただし出資比率の設計に時間をかけること
  • 意思決定の速度:単独発起人は意思決定が速く、経営の自由度が高い。スピード重視のビジネスには単独のメリットが大きいです
  • スキル・人脈の補完性:自分にないスキルを持つ発起人と組むことで事業の幅が広がります。ただし役割と報酬を明確にしないと共同創業トラブルの原因になります
  • 退任リスクへの対処コスト:株主間契約・定款設計・法務費用など、複数発起人の初期コストは単独より高くなる場合があります。これを織り込んだ事業計画が必要です

個人差や事業の性質によって正解は異なります。判断に迷う場合は、弁護士・税理士・ファイナンシャルプランナーなど専門家への相談を強くお勧めします。

まずは事業の「土台」を整えることから始めてください

株式会社の発起人を複数にする際の注意点を、実例3つと7つの視点でお伝えしました。出資比率・議決権・退任リスクという設計ミスは、会社設立後に修正することが難しく、共同創業トラブルの大半はここから始まります。

株式会社の設立を検討中で、まだ個人事業主として準備を進めている方には、まず開業届の作成から着手することをお勧めします。書類作成の手間をできるだけ省き、本来集中すべき事業設計に時間を使ってください。マネーフォワード クラウド開業届は、フォームに入力するだけで開業届を作成できるサービスで、フリーランス・個人事業主の方に広く利用されています。

フォーム入力で開業届を簡単作成!【マネーフォワード クラウド開業届】

筆者:Christopher(クリストファー)/AFP(日本FP協会認定)・宅地建物取引士。大手生命保険会社2年、総合保険代理店3年を経て、個人事業主・フリーランスの資金相談を多数担当。現在は東京都内で法人を経営し、インバウンド向け民泊事業を運営中。フリーランス・個人事業主・法人の資金調達事情を実務視点で多角的に解説する。

【免責事項】
本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の投資・税務・法務行為を推奨するものではありません。記載内容は執筆時点の情報に基づきますが、最新情報や個別具体的な判断については、各分野の専門家(税理士・弁護士・宅建士・FP等)または公的機関にご相談ください。

【執筆・監修】
Christopher(AFP / 宅建士 / TLC)- 金融・不動産・法人実務の実体験ベースで執筆

本記事のリンクはアフィリエイトリンクを含みます。

タイトルとURLをコピーしました