「スマホ代って経費にしていいの?按分割合はどれくらい?」これはフリーランスが確定申告の時期になると必ずぶつかる壁です。私はAFP資格を持ち、総合保険代理店時代に個人事業主の資金相談を数多く担当してきました。現在も東京都内で法人を経営しながら個人事業主として活動しています。その経験から、スマホ経費の家事按分を正確かつ税務調査に耐えられる形で計上する方法を、実務視点でお伝えします。
スマホ経費按分の基本ルール|フリーランスが知るべき通信費の扱い
家事按分とは何か――私用と業務を切り分ける原則
家事按分とは、生活費と事業費が混在する支出を「業務で使った割合だけ経費にする」考え方です。所得税法上、個人事業主は事業に関係する支出しか必要経費として認められません。スマホは「連絡、調べもの、SNS更新、地図アプリ」など仕事でも私用でも使うため、全額を通信費として計上することは認められません。
按分の根拠は所得税法第37条に定める「業務の遂行上必要な費用」にあります。つまり、「この部分は確かに仕事で使った」という合理的な説明ができなければ、税務調査で否認されるリスクがあります。根拠のない70%計上より、根拠のある50%計上のほうがはるかに安全です。
個人事業主が使うスマホを「仕事用」と認めてもらう条件
税務署が経費として認める通信費には、業務との関連性の証明が求められます。具体的には、①クライアントとの連絡に使用している、②業務管理アプリや会計ソフトを利用している、③仕事の写真・動画撮影に使用している、といった事実が確認できる状態が理想です。
仕事用と私用で端末を分けている場合は話が早く、仕事用端末の費用は全額経費にできる可能性が高いです。ただし、1台を兼用しているフリーランスがほとんどでしょう。その場合は、後述する3つの算定根拠を使って合理的な割合を算出することが重要になります。
私が使う3つの算定根拠|按分割合を数字で説明する方法
算定根拠①:使用時間ログ(最もシンプルで説明力が高い)
私が最初に試みたのは「1日の使用時間を業務と私用に分けて記録する」方法です。iPhoneであれば「スクリーンタイム」、Androidであれば「Digital Wellbeing」機能でアプリごとの使用時間が確認できます。
たとえば、1日平均4時間使用していて、そのうちSlack・Gmail・Googleマップ・会計アプリなどの業務用アプリで2時間使っているとします。この場合、按分割合は50%です。週単位・月単位でスクリーンショットを保存しておけば、万が一の税務調査でも「この数字を根拠にしました」と説明できます。私は毎月末日にスクリーンタイムの画面を撮影してGoogleフォトのフォルダに保存しています。
算定根拠②:通話履歴と発信相手の分類(業務証明として強力)
2つ目の根拠は通話履歴です。スマホの通話履歴をエクスポートするか、毎月の利用明細を取得し、発信・着信の相手をクライアント・取引先・プライベートに分類します。私はキャリアのMyPageから月次の通話明細をダウンロードし、Excelのシートに「業務」「私用」を手入力で仕分けしています。
この方法のメリットは、第三者機関(通信キャリア)が発行した客観的なデータが残る点です。「全通話のうち業務通話が65%だった」という根拠があれば、按分割合65%は十分説明できます。ただし、メッセージ(LINE・SMS等)は通話明細に含まれない点に注意が必要です。通話以外の業務利用は、使用時間ログで補完するのが現実的な運用です。
算定根拠③:データ通信量の業務用アプリ比率(エンジニア・デザイナーに有効)
3つ目は、データ通信量を業務用アプリと私用アプリに分ける方法です。動画視聴・ゲームといった私用アプリがデータ通信量を大量に消費している場合、業務アプリの比率は相対的に低くなります。反対に、クラウドストレージへのファイル転送、リモート会議ツール、取引先とのファイル共有などでデータを多く使うフリーランスは、この根拠が有利に働く場合があります。
iOSの「設定→モバイル通信」、AndroidのデータモニタリングアプリでアプリごとのLTE通信量が確認できます。この数字をスクリーンショットで月次保存することが按分根拠の記録として有効です。ただし、Wi-Fi通信は集計に含まれないため、Wi-Fiを主に使う環境では使用時間ログを主軸にするほうが実態に合っています。
按分割合の目安は50〜80%|根拠なき高割合が税務調査リスクを生む
フリーランスの業種別・実態に近い目安
国税庁は按分割合の「正解」を公表していません。一般的に、フリーランスのスマホ経費として認められやすい按分割合は50〜80%程度とされています(税理士・会計士の実務慣行として広く知られている水準です)。
業種別のイメージとして、ライターやエンジニアのようにパソコン中心で働き、スマホは主に連絡ツールとして使う場合は50〜60%が現実的な水準と考えられます。カメラマンやSNS運用代行など、スマホ撮影・投稿が主要業務の方は70〜80%も合理的に説明できます。重要なのは「自分の使い方を数字で説明できるか」です。根拠なしに「80%にした」では税務調査で問題になる可能性があります。
80%超を主張したい場合に必要な追加の証拠
80%を超える按分を申告するのであれば、前述の3つの算定根拠を複数組み合わせて記録する必要があると私は考えています。たとえば、「使用時間ログで業務82%」に加えて「通話履歴で業務78%」の両方が揃えば、80%という割合の合理性を二重に担保できます。
私が保険代理店で相談を受けていたフリーランスのWEBデザイナーの方は、当初スマホ代を全額経費計上していました。根拠を尋ねると「仕事でしか使っていないから」とのことでしたが、通話履歴を確認するとご家族への連絡も相当数あり、実態は70%程度が妥当でした。「全額計上」は税務調査で修正申告を求められるリスクが高く、過少申告加算税のリスクもあるため、実態に即した割合での申告を強くお勧めしました。法人化せず節税できる10の方法|フリーランス必読
按分根拠を残す記録術|税務調査で否認されない3ステップ
毎月の「按分記録シート」を作る習慣
記録は「後でまとめてやろう」では機能しません。私が実践しているのは、毎月末の5分間で行う「按分記録の月次ルーティン」です。具体的には次の手順です。
まず月末にスクリーンタイム(または使用時間ログ)のスクリーンショットを撮影し、Googleドライブの「按分記録」フォルダに「2026年1月_スクリーンタイム.png」のように年月をファイル名に入れて保存します。次に通話明細をキャリアのMyPageからPDF保存します。最後にExcelシートに「月・合計使用時間・業務時間・業務割合・算出した按分%」を1行で記録します。これだけで、確定申告時に過去12か月分の按分根拠がすぐ取り出せる状態になります。
会計ソフトへの入力で記録と申告を一本化する
按分割合が決まったら、毎月の通信費をその割合で会計ソフトに入力します。たとえば月額8,000円のスマホ代を60%按分するなら、4,800円を「通信費」として計上します。この作業を毎月自動化できるのが、クラウド型会計ソフトの強みです。
私が法人経営と個人事業の両方で使っているのはマネーフォワード クラウドです。銀行口座やクレジットカードを連携させると、月々のスマホ料金の引き落としを自動で取得し、勘定科目と按分割合を一度設定すれば翌月以降は自動仕訳されます。確定申告の直前になって1年分の領収書をまとめて入力する、という事態を防げるため、記録の正確性という観点でも会計ソフトの活用は実務上の必須事項だと考えています。開業1年目の確定申告|注意すべき5つのポイント
按分ミスで損した失敗談|私が初年度の確定申告で痛い目を見たこと
「なんとなく70%」で申告した1年目の後悔
個人事業主になって最初の確定申告、2021年3月のことです。当時の私はスマホ代8,580円(月額)の70%、つまり月6,006円を通信費として計上しました。根拠はと言えば「仕事で結構使ってるし、7割くらいかな」という感覚的な判断です。AFP資格を持ちながら、自分のことになると詰めが甘くなるのは今思えば恥ずかしい話です。
翌年、税理士に初めて申告書のレビューをお願いした際、「この70%の根拠は何ですか?」と即座に聞かれました。答えられない私に、「根拠なき按分は税務調査で一番見られます。今すぐ記録のやり方を変えてください」と指摘されました。幸い税務調査には至りませんでしたが、もし調査が入っていれば、1年分の通信費の按分全額が否認され、追徴課税が発生していた可能性があります。金額にすると年間で約72,000円分の経費計上が危うかった計算です。
失敗から学んだ「記録が先、申告は後」という鉄則
この経験から私が変えたのは、申告前に根拠を考えるのではなく、日常的に記録を積み重ねるという習慣です。記録があれば、どんな割合でも「この数字を根拠にしています」と堂々と説明できます。記録がなければ、合理的な割合であっても説明できず、否認リスクが生まれます。
民泊事業を立ち上げた2023年には、インバウンドのゲスト対応でスマホを業務利用する時間が一気に増えました。翻訳アプリ、予約管理アプリ、外国語でのメッセージ対応と、スマホなしでは運営できない状態です。この時期から按分割合を65%から75%に変更しましたが、スクリーンタイムのデータが根拠として揃っていたため、変更の理由を明確に記録に残すことができました。「事業内容の変化に合わせて割合を見直す」こと自体は正当な行為です。大切なのはその根拠を残すことです。
まとめ+確定申告を楽にするための次のステップ
スマホ経費の家事按分で押さえるべき3つのポイント
- 根拠は3種類から選ぶ:使用時間ログ・通話履歴・データ通信量比率のいずれか、または複数を組み合わせて算定する。感覚での割合設定は税務調査リスクの温床になる。
- 割合の目安は50〜80%:業種や実態に応じて異なるが、80%超を主張する場合は複数の根拠を重ねて記録する。根拠ある50%は、根拠なき80%より安全です。
- 記録は月次で積み重ねる:スクリーンタイムのスクリーンショット・通話明細PDFを毎月保存し、Excelシートに按分%を記録するルーティンを作る。申告直前に慌てても記録は作れません。
会計ソフトで按分入力を自動化して確定申告の負担を減らす
毎月の按分計算と通信費の入力作業を手入力で続けるのは、フリーランスにとって時間とエネルギーの無駄です。私が実際に法人・個人事業の両方で活用しているのがマネーフォワード クラウド確定申告です。カード明細の自動取得・勘定科目の自動学習・按分設定の保存まで一括で管理でき、確定申告書の作成まで一気通貫で行えます。
記録の積み重ねを仕組みとして作り、按分根拠を正確に申告することが、フリーランスが税務調査に怯えず経営に集中できる基盤です。まずは無料プランから試してみることを検討する価値があります。
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本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の投資・税務・法務行為を推奨するものではありません。記載内容は執筆時点の情報に基づきますが、最新情報や個別具体的な判断については、各分野の専門家(税理士・弁護士・宅建士・FP等)または公的機関にご相談ください。
【執筆・監修】
Christopher(AFP / 宅建士 / TLC)- 金融・不動産・法人実務の実体験ベースで執筆
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