赤字決算でも融資を通す方法|決算書の見せ方7つ

「赤字決算だから融資は無理」と思い込んでいませんか?私がAFPとして総合保険代理店に勤めた3年間で、500人を超えるフリーランス・個人事業主の資金相談を受けてきた経験から断言できます。赤字決算でも融資を通す方法は存在します。カギは「数字そのもの」ではなく、決算書の見せ方と補足資料の質にあります。

赤字決算で融資が通らない本当の理由

審査担当者が最初に見ているのは「実態利益」

金融機関の審査担当者は、損益計算書の最終行だけを見ているわけではありません。彼らが本当に気にしているのは「この事業は継続的にキャッシュを生んでいるか」という一点です。つまり、帳簿上の赤字と事業の実力は、必ずしも一致しないと彼らも理解しています。

ところが多くの個人事業主は、赤字の決算書をそのまま提出して審査に臨みます。補足説明もなく、添付資料もない。これでは審査担当者が「実態利益」を読み取る材料がないため、数字だけを見て否決せざるを得なくなります。決算書の見せ方を工夫しないまま申請するのは、実力の半分も伝わらない状態で面接に臨むようなものです。

「一時的な赤字」と「構造的な赤字」は別物

融資審査において致命的なのは、設備投資・初年度の立ち上げコスト・突発的な修繕費といった一時的な赤字ではなく、売上が継続的に下落している構造的な赤字です。審査担当者はこの二つを区別しようとしていますが、申請者側が何も説明しなければ最悪のケースで判断されます。

保険代理店時代、フリーランスのWebデザイナーから相談を受けたことがあります。その方は機材更新のために約180万円を一括経費計上したため、その期だけ赤字になっていました。しかし申請書類には「機材更新による特別経費が発生した」という一文すらなく、否決されていました。補足説明を一枚加えるだけで結果が変わった可能性が高い事例でした。

決算書の見せ方を変える7つの工夫|保険代理店500人相談で見えたパターン

一時費用の明示・償却前利益の提示・役員報酬の開示

私が相談を受けてきた中で、審査通過率を高めた手法を整理すると、主に以下の7点に集約されます。

  • ① 一時的な特別経費を「事業継続に必要な投資」として文書化する
  • ② 減価償却費を加算した「償却前利益(EBITDA的指標)」を別紙で提示する
  • ③ 役員報酬・事業主報酬の金額と根拠を明示する
  • ④ 直近3ヶ月の売上推移を月次で示し「回復傾向」を数字で証明する
  • ⑤ 赤字になった原因と、解消に向けた具体的施策を1枚の説明文にまとめる
  • ⑥ 通帳コピーで実際のキャッシュフローを可視化する
  • ⑦ 取引先との継続契約書・発注書を添付して売上の安定性を担保する

この7点すべてを一度に揃える必要はありません。ただし、①②③の3点は最低限用意すべきです。これらは決算書の数字を「書き換える」のではなく「正しく読んでもらうための補助線を引く」行為です。数字の改ざんは論外ですが、説明を加えることは申請者の正当な権利です。

取引先情報と売上の安定性を「見える化」する

フリーランスの資金調達で特に弱点になりやすいのが「売上の不安定さ」という印象です。これを払拭するために有効なのが、取引先との継続契約書や発注書の写しを添付することです。

保険代理店時代にご相談いただいたフリーランスのシステムエンジニアの方は、赤字の決算書しか持っていませんでした。しかし3社との年間保守契約書を添付し、「毎月固定で約35万円の収入が見込まれる」ことを示した結果、日本政策金融公庫(公庫)の審査を通過しました。決算書の数字は変えていません。添付資料の質を上げただけです。

役員報酬調整で営業利益を黒字化する考え方

役員報酬は「経費」であり「調整弁」でもある

法人を経営している方に特に知っておいていただきたいのが、役員報酬の扱いです。役員報酬は損益計算書上では販売費及び一般管理費に計上されるため、金額が高いほど営業利益を圧迫します。つまり、役員報酬を下げれば帳簿上の利益は改善されます。

ただし、これは「役員報酬を下げて節税効果を薄める」トレードオフを伴います。私自身、東京都内で法人を立ち上げてインバウンド向け民泊事業を始めた初年度、役員報酬の設定を誤って帳簿上は赤字になってしまいました。そこで翌期の株主総会で役員報酬を適切な水準に見直し、融資申請の際には「前期は役員報酬の過剰計上が原因であり、本業のキャッシュフローは黒字だった」という説明資料を作成しました。なお、役員報酬の変更は税務上のルールに従って行う必要があります。必ず税理士に相談のうえ実施してください。

個人事業主が「事業主貸」を活用して見せ方を整える方法

個人事業主の場合、役員報酬という概念は存在しませんが「事業主貸」という科目が同様の役割を果たします。生活費として引き出した金額が事業主貸として計上されるため、これが大きいほど見かけ上の利益が減る構造です。

融資審査では、事業主貸の金額を「生活費として必要な最低限の金額」として説明できるかどうかが問われます。年間600万円の事業主貸があれば、審査担当者は「この人は毎月50万円を生活費に使っている」と読みます。根拠のある金額であれば問題ありませんが、説明できない高額の事業主貸は審査上マイナスに働くことがあります。2者間ファクタリングと3者間の違いと選び方“>個人事業主の決算書の読み方については、こちらの記事も参考にしてください。

減価償却費の扱いで融資審査の印象を変える方法

償却前利益を提示することで「キャッシュ創出力」を示す

赤字決算でも融資を通す方法として、私が最も有効だと考えているのが「償却前利益」の提示です。減価償却費は実際にはキャッシュが出ていかない会計上の費用です。そのため、赤字の金額に減価償却費を加算した数字(いわゆるEBITDA的な指標)を別紙で示すことで、事業の実態的なキャッシュ創出力を伝えられます。

例えば、営業損失が年間50万円であっても、減価償却費が年間120万円計上されていれば、実態的な現金収支ベースでは70万円のプラスということになります(一般的な考え方として)。この数字を「実態キャッシュフロー試算」として1枚にまとめ、計算根拠とともに提出すると、審査担当者の印象が大きく変わります。

公庫の赤字融資審査で減価償却が評価されるケース

日本政策金融公庫(公庫)の審査では、民間金融機関と比較して事業の将来性や継続意欲を重視する傾向があります。特に「創業融資」や「経営改善・立て直しを目的とした融資」では、過去の赤字よりも今後の収益計画が重要視されます。

私が民泊事業の法人融資を公庫に申請した際、初年度の決算書は赤字でした。しかし、設備費(民泊物件の内装費・家具購入費)の減価償却が大きく影響していることを数字で示し、3年分の収支計画とインバウンド需要の回復データ(観光庁の訪日外客統計を参照)を添付しました。審査には時間がかかりましたが、最終的に融資を受けることができました。準備した補足資料の質が、結果を左右したと実感しています。2社間ファクタリング個人事業主の注意点7選|相談500人で見た落とし穴“>公庫融資の申請手順については、こちらの記事で詳しく解説しています。

公庫申請中の私が用意した補足資料3点|まとめとCTA

赤字決算で融資を通すために最低限準備すべき資料

ここまでの内容を踏まえ、赤字決算でも融資審査を通過するために最低限準備すべき補足資料を整理します。

  • ① 赤字原因の説明書(A4・1枚):「なぜ赤字になったか」「その要因は一時的か構造的か」を簡潔に説明する文書。箇条書きで構いません。私が公庫に提出したのは、設備投資・立ち上げコスト・為替変動の影響を三段落で説明した1枚の文書でした。
  • ② 償却前利益の計算書(A4・1枚):損益計算書から減価償却費を加算した実態キャッシュフローを示す試算書。会計ソフトから数字を引っ張れば10分で作成できます。なお、記載する数字は一般的な計算方法に基づく試算であり、個別の税務・会計判断については専門家に確認してください。
  • ③ 今後12ヶ月の収支計画書:月次ベースで売上・経費・利益の見込みを記載した計画書。根拠となるデータ(既存契約・受注見込み・市場データなど)を必ず添付することが重要です。

融資審査を待つ間のキャッシュ不足には即日対応策を

融資申請から審査結果が出るまでには、公庫で一般的に1〜3週間程度かかります。申請中にキャッシュが底をつきそうになった時、私が実際に検討したのがファクタリングや報酬の先払いサービスです。特にフリーランス・個人事業主の方にとって、請求書を発行してから入金まで30〜60日かかるケースは珍しくありません。その間のつなぎ資金を確保できるかどうかが、事業継続の分かれ目になることもあります。

審査結果を待ちながら手元資金を確保したい方、あるいは融資に頼らずに今月の資金繰りを乗り切りたい方は、フリーランス・個人事業主向けの報酬即日先払いサービスを選択肢の一つとして検討する価値があります。銀行融資とは異なり、審査の軸が「取引先の信用力」に置かれるため、赤字決算でも利用できる可能性があります(個人差・審査結果によります)。資金調達の手段は一つに絞らず、複数の選択肢を持っておくことが個人事業主にとっての最大のリスクヘッジです。専門家(税理士・中小企業診断士など)への相談も合わせて検討してください。

フリーランス・個人事業主限定の報酬即日先払いサービス「labol(ラボル)」

筆者:Christopher(クリストファー)/AFP(日本FP協会認定)・宅地建物取引士。大手生命保険会社2年、総合保険代理店3年を経て、個人事業主・フリーランスの資金相談を多数担当。現在は東京都内で法人を経営し、インバウンド向け民泊事業を運営中。実務経験をもとに、資金調達・節税・キャッシュフロー改善を多角的に解説する。

【免責事項】
本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の投資・税務・法務行為を推奨するものではありません。記載内容は執筆時点の情報に基づきますが、最新情報や個別具体的な判断については、各分野の専門家(税理士・弁護士・宅建士・FP等)または公的機関にご相談ください。

【執筆・監修】
Christopher(AFP / 宅建士 / TLC)- 金融・不動産・法人実務の実体験ベースで執筆

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